1964年に発表された『FINLANDIA』シリーズは、Timo Sarpaneva(ティモ・サルパネヴァ)の1960年代の代表作。
新たな技術を追い求めてガラスの表現の探求と実験を繰り返す中、1963年に別の実験に際しての副産物であった表面が焼け焦げた木型をヒントに作品へと発展させました。
焼け焦げた木型の表面がそのままガラスに写しとられた凹凸のある不規則な表面のテクスチャは、
1950年代から続いたシンプルなモダンデザインがやや停滞した1960年代において革命的な表現であり、この後1970年代まで続くトレンドとなりました。
同じ品番でも複数の木型があり、また木型の表面も製造を続けていくうちに変化するため、フォルムや表面のテクスチャーなど同じ品番でもひとつひとつユニークな作品に仕上がります。
サイズやフォルムにもよりますが、一つの木型から製造できるのは10〜20個だったようです。
こちらは、『FINLANDIA』シリーズとして最初に発表された作品の一つ『3354』。
1964年から1970年にかけて製造。
大小2つのサイズバリエーションで展開され、こちらは希少な大きい方となります。
炭化した木型の表面の凹凸のあるテクスチャがくっきりと写し取られており、使用した木型で早い時期に製造された個体だと思われます。
また、仕上げが通常の『FINLANDIA』シリーズと異なり、底面はサンドブラスト加工、天面の口周りは研磨が非常に丁寧に施された特別な逸品です。
黄色いガラスは、木型の炭化した表面と高温のガラスとの間で起こる化学反応によるものです。
製造時に木型を濡らすことにより水蒸気を発生させて軽減できますが、
この場合、表面のテクスチャを写し取ることを妨げるため『FINLANDIA』シリーズでは採用されませんでした。
カットサインは『TIMO SARPANEVA -3354』。
※目立つダメージなく良い状態です。